小さい頃、駅で蕎麦つゆの濃い匂いを漂わせていた駅そばにほのかな憧れを抱いていた私は、アルバイトをするようになりお小遣いを少しだけ自由に使えるようになってからは、駅そばに足しげく通うになりました。

駅そばは、大きく分けて次の3種に分けられます。まずは、おそらく現在最も多いと思われる駅改札内、コンコース等に店を構える「駅ナカタイプ」。次に、駅の改札外にある「駅近タイプ」。そして、最後は駅のプラットホームで営業する「ホーム営業タイプ」です。

私は、このプラットホームにある駅そばが、最も風情があり大好きです。電車を降りるとあたりに漂ってくる蕎麦ツユの甘辛い香りを感じ、中に入らざるを得ません。そして電車の往来や案内放送を間近に聞きながら手繰る駅そばは、他にはない独特の雰囲気、旅情を醸し出してくれます。通勤の途中であれば、一瞬その苦痛を和らげてくれるオアシスになる、と言っても過言ではないと思います。

そんなプラットホームにある駅そばも、都内では減少の一途をたどっており、寂寥感を覚えます。今でもよく通うお店としては、赤羽駅3・4番ホームの「大江戸そば」、五反田駅ホームの「道中そば」、そして今回ご紹介する上野駅7・8番ホームの「爽亭」です。

ジャパン・トラベル・サービスの公式ページより転載

爽亭は、ジャパン・トラベル・サービスという会社の傘下にあるブランドです。この会社は、有名なところでは東海道新幹線名古屋駅ホームにあり、長年愛されている「きしめん住よし」なども傘下におき、長く駅構内の飲食を手掛けています。

ここの出汁つゆは、やや辛めのスッキリした味わいで、近年甘めのツユが多くなってきた駅そばの中でも私の好みにぴったり合っていて、駅そばの中でも1、2を争うお店です。爽亭は池袋駅構内にもありますが、こちらは「駅ナカタイプ」。プラットホーム営業タイプとしては、ここが最も好み、ということになります。

平日早6:30の開店から9:00頃だけ販売している「朝得そば/うどん」は、甘辛い汁をたっぷり含んだお揚げ、揚げ玉、わかめ、ネギが入って310円(2021年4月現在)と、大変お得です。熱々のそばを手繰って身体を温めれば、1日元気で過ごせるというものです。

他にも、定番の「月見そば」「たぬきそば」や「コロッケそば」などもオススメ。どれも甘さ抑え目でスッキリした出汁とよく合います。

最近では、都心部を中心に駅そばは統廃合が進んだ印象で、旧NRE(日本レストランエンタプライズ)から2020年4月に名称を変更したJR東日本フーズが最大勢力かと思います。「いろり庵きらく」「大江戸そば」「あずみ」「あじさい茶屋」「大船軒」「奥多摩そば」などは、全てJR東日本フーズの傘下で、食券発券機はどの店舗も同タイプのものになりますが、麺とつゆは各ブランドでかなり異なった味わいとなっています。

赤羽駅3・4番ホームにある「大江戸そば」の出汁は、昔ながらの関東そばらしく醤油色が強い濃い目。また、蕎麦自体も昔ながらの柔らか目でフワッとした食感です。それこそ、昔の駅そばよりも喉越しは良くなっていますが、長く駅そばを食べている私にとって、大江戸そばはそこはかとない郷愁を感じさせてくれる、貴重なお店です。このあたり、同系列の「いろり庵きらく」ではやや薄い色の甘辛いつゆにやや半透明感あるもっちり食感のそばと、全く異なる味わいとなっていて、同じ企業のブランドでもきっち味を分けている点は、なかなか面白い企業だな、と思います。

一言で「駅そば」「立ち食いそば」と言っても、このように奥深いものとなります。もちろん、町のお蕎麦やさんとは違うタイプのお蕎麦とは思いますが、駅そばは「駅」「電車移動」という刹那な時間を豊かにしてくれる、大切な存在です。これからも楽しんでいければと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください